宰相府藩国 水の巨塔

作業員物語

エピローグそして始まり

「さぁ、明日からは色々なチェック方法を教えるからな。しっかり働けよ? ああ、あとなんだかんだと脅したが、まぁそんなに心配はいらないからな?」

 ニカニカと笑う教官を背景にトボトボと歩くコウとレン。
「なぁ、レン。親父さん本当にあそこで仕事してたのか疑問だよなぁ」
「……うーん、探偵さんの手紙には働いていたらしいって書いてあったし、もしかしたらまだ勤務してるかもしれないよ? 守秘義務とかが結構あるみたいだし……」
 レンの言葉を聞いているうちに、コウは教官の念を押すかのような『他人に話すな』という言葉を思い出した。コウはどことなく不安そうなレンを見つめると優しく笑いながら言った。
「まぁ、なんかあったとしても、俺が守ってやるよ」
 コウはそう言うと、赤い帽子の上からレンの頭をなでた。
「……うん、でもなんか、それ、年下にするみたいなんだけど」
 レンはそう言いつつもあまり気にせずにニコっと笑った。
「あーうん、ま、そんなもんだ。んで、アルバイトはするのか?」
 なんとなく照れつつも、コウはレンの意思を確認するために聞いてみた。
「うん。やっと見つかった父さんのいた場所だし。それにきっと手がかりあると思うから……しばらく仕事してみるよ」
 親友の真剣な目つきを見ながら、コウはなんとなく楽しくなってきている事を自覚していた。きっと明日は明日で、また色々あるだろう。けれど、他の職場よりは何かと面白そうだ。何よりも幼い頃に行方不明になった親父を探す友の手伝いをしてやるというのは、男の仁義にのっとった正しい事である。
「さ、コウ、帰りに晩御飯でも食べて帰ろ?」
「だな」
二人は夕日の中を歩いていった。教官はその後ろ姿をジっと見ていた。サングラスを外して素顔を見せているその顔はまっすぐにレンの後姿を見つめていた。
「レン……名前を見た時にもしやとは思ったが……立派に成長していたのだな」