にじのおはなし
むかし、にじのはしには宝があるといわれていました。にじのはしにはいちばんの宝がねむっている。
そんなむかしばなしをしんじてひとりの男の子が旅たちました。
けれど、どんなににじをおいかけてもはしはみつかりません。
男の子のはなしをきいたおとなたちはそんなのはウソだよといいます。
でも、男の子はあきらめずににじをみつけると走りつづけました。
ある日、男の子がにじのはしをおいかけていると、いっぴきのネズミにあいました。
「そんなにいそいでどうしたんだい?」
ネズミのことばに男の子はいいます。
「にじのはしにある宝をさがしているんだ」
ネズミは男の子に笑うといいました。
「にじのはしにある宝はとりにいってはいけなんだよ?」
「どうして?」 と男の子がたずねるとネズミはこたえました。
「にじのはしの宝はみんなのものなんだ。ひとりじめはできないよ?
もし、きみがそれをとったらもう、にじはみえなくなっちゃうよ?」
男の子はにじがだいすきだったのでなきそうになりました。
「でも、にじのはしに宝があるのならきっとだれかがとっちゃうよ」
「だいじょうぶだよ、にじも宝がとられるとじぶんがきえちゃうのをしっているからすぐにきえるんだ。
それだったらだれにも宝はとれないからね」
ネズミのことばにあんしんし、男の子はいえにかえることにしました。
にじのはしにある宝はだれにもとることができないのです。
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今日の天気はうん、問題なし。絶好の虹びよりだ。
「タキくん。今日も行くからね」
「あー、うん」
私の言葉に上の空で答えるタキくん。まぁ、付き合ってくれてるのだからよしとしよう。
私には日課がある。それは空を見て雨が降っていなかったら水の塔へ行く……という日課である。そもそも水の塔とは私達の国の象徴ともいえる水を管理する塔である。
実際にどんな事をしてるのかは詳しくは知らない……というか、基本、一般人立ち入り禁止なので中に入った事はない。
立ち入り禁止である以上、観光客はもちろん、地元の人もほとんど近くまで行く事はめったにない。そういう私も別に水の塔自身にはあんまり用事はないのである。
「……それにしても、いったいいつまで虹を見に行き続けるつもりだ?」
「もちろん、九色に見えるまで!」 タキくんの言葉に即答する私。そもそも、私は別に虹が好き……という訳ではない。単純に自分に虹が九色に見えないのがくやしいだけである。
そもそもの発端は宰相府藩国新聞のせいである。以前、宰相様のインタビューが載っていた時、宰相様が「私には虹が九色に見える」という発言をしていた。
別に宰相様が九色に見えるからといって私が九色に見えないといけないわけではない。けれど、国のトップが九色に見えて、私が見に行った時に七色にしか見えなかったのはくやしい。
そんな理由で私は今日まで天気の悪くない日はいつも水の塔に虹ができていないか? できてたら九色に見えないか? を確認に行っている。
「……頑固なんだからなぁ……」
そんなタキくんの言葉はオールで無視し、今日もいつものように虹の塔じゃない、水の塔にかかっている虹を確認する……。
「うー、やっぱり七色だ……」
「……あー、七色なら七色でいいと思うんだけどなぁ」
「ダメ」
私の言葉にタキくんはポリポリと頬をかく。
「あー、ミーちゃん。これ見てから虹見てみ?」
タキくんはそういうと私に紙を差し出した。紙には虹の絵が載っている……ってあれ? これ九色だ。
「タキくん、これって?」
「九色の色の虹の色に慣れてから見てみな。うまくいけばなんとなく九色に見えるかもよ?」
「みえた!」