宰相府藩国 水の巨塔

作業員物語

第二章 ようこそ、水の塔

「さて、ここが水の塔である。我が国の水のライフラインを守る重要な施設だな」
 タカヤ教官の言葉など耳に入れず、水の塔をジっと見るレンとコウ。なにせ水の塔は一般人立ち入り禁止なので、遠くから見る事はあってもわざわざ近くまで来ることがないのだ。まぁ、よっぽどのマニアならば日参で見に来ていることもあるのだろうが、レンもコウもそんなマニアではなかった。
「ここが、父さんの働いていた場所……」
「ああ、お前の親父さんがいたらしいんだよな?……何か見つかるといいよな」
 なんとなく不安になっている二人など気にせずに、タカヤ教官はタカタカと水の塔を通り過ぎ、別の建物の方へと向かっていく。
「って、教官、どこに行くんですか! 俺らの職場は水の塔じゃないんですか?」
 コウの言葉に華麗な足取りで回れ右をすると、教官は口を開いた。
「勇者の道も一歩から、まずは知識を蓄えるのだ。さぁ、急ぎたまえ」
 教官はそう言うと再び回れ右をし、目的地であろう建物へとタカタカと歩んでいく。
「なぁ、あの勇者ってなんなんだかって思わねぇか?」
 コウの言葉にんーとしばし考えるとレンは答えた。
「勇者って響きはカッコイイと思うけど」
「いや、ただのアルバイトが勇者ってどうよ?」
 再びんーっと考えるレン。
「……別にいいと思うけど?」
 コウは頬をポリポリと掻くと呟いた。
「あー、まぁいいけどさ……こういうタイプって騙されやすそうだよなぁ」
 改めてそう思ったコウは、こいつは俺が守ってやると決意をした。
「? どうしたのコウ? 教官さん、行っちゃうけど……」
「あ、ああ。じゃあ、行くか!」
 レンとコウは慌てて教官の方へと走っていった。