宰相府藩国 水の巨塔

作業員物語

第一章 私の事は先輩ではなく、教官と呼びたまえ!

「あー、という事で、君達が今回選ばれた勇者達だね?」
 指揮棒にサングラス、軍服に身を包んだ男が言った。
「勇者? なんだそりゃ」
「……えーと、水の塔作業員のお仕事……ですよね?」
 アルバイト面接が終わり、実際の勤務場所にいたのは軍服男であった。
「ふむ、ライフラインを守る重要な仕事なのだ。これぞ勇者の仕事ではないかね?」
 軍服男の言葉にコソコソと耳打ちをする二人。
「なぁ、レン。ここがホントにお前の親父さんがいた仕事場なのか?」
 コウの言葉にレンが小声で答える。
「うん、探偵さんの手紙によるとこの職場でいいはずだけど……」
 結局手紙を見なかったコウは、もしかしてレンのヤツ手紙の見間違いしたんじゃねぇだろな? とも思ったが、まぁ友人を信じる事にした。軍服男は二人を気にせずに懐から書類を出しつつ話を続けた。
「あー。うん。写真によると君が赤い帽子のレン君だな。あと、そして君がおまけのコウ君だな?」
「おまけって何だよ!」
 いや、なんか面接の時に妙に同じ場所で働かせろと叫んでいたらしいし、そんな事言っていたらおまけ扱いになるのも至極当然ではないか? 第一書類にもおまけって書いてあるし……などと軍服男は思ったがあえてとぼけるように答えた。
「いやぁ、書類におまけって書いてあるだけで何故おまけなのかはおじさん、知らないよ?」
「……なんだよ、そのおまけ扱いは。面接のおっさんはどういう意図でそんな事書いたんだ?」
 コウがブツブツと言っているのをまったく気にせずに軍服男は話を続ける。
「私はタカヤだ。タカヤ教官と呼びたまえ。これから君達新人を育成し、水の塔を守る立派な勇者にするために派遣されてきた戦士である。説明は以上だ。ではまず職場を案内しよう」
 喋るだけ喋るとタカタカと歩き出すタカヤ教官。レンとコウは顔を見合うと慌てて後を追いかけた。