宰相府藩国 水の巨塔

構造

主な構造

 前述の通り、建造に当たって最も大きな問題は強度と水の噴き上げについてであった。まず強度であるが、全長2.6kmが地下庭園の地盤から地上の地盤を貫き湖の中にそびえ立つのだ。逆に言えば地盤によって支えられている部分が2箇所もあるということであり、地下庭園においてはそれほど問題ではなかった。問題は湖の中に立つ地上部である。耐震性も備えつつ美しくなければならない。また、水を噴き上げることについても、2.6kmを一気に上らせることは不可能である。これも解決する必要があった。
 これら二つの問題を一挙に解決するためにまず考えられたのは、多層構造である。外殻、内殻、内部構造、核という4つの層を作ることで役割と応力を分担する。これによって美しい外観を実現することが可能となった。しかし、いくら強固な外殻を作ろうと内部から崩れては話にならない。水の問題もまだ解決していない。そこで考え出されたのが、トライスパイラルという工法だ。

トライスパイラル図
 内部区画を100mずつに区切り、その円筒を3等分する。それを少しずつずらして配置することで応力の集中を防ぎ、水の汲み上げも次のブロックまでとした。その結果、強度そのものも高くなり水を頂上まで運ぶことも可能となった。この工法ならばブロックごとに製造し、それを積み重ねるだけなので建造はそれほど労せず行える。また、動力源となるブロックや整備用具を収めたブロックなど、水を運ぶだけではなく用途に合わせた様々なブロックを設置することもできるため、外部から物を運び込みづらいこの水の塔ではうってつけの工法だったといえる。その無数のブロックの中にいくつか詳細不明かつ立ち入りができない物があるが、それに触れたものは何週間か行方不明になるとの話である。
 また、建造物自体の耐久性を考える際に欠かせないのが、柔軟性である。衝撃の逃げ場がないと固いだけの棒は簡単に折れてしまう。そこで外殻と内殻、内部構造と芯との間に2mほどの厚みを持つ高減衰ゴムを埋めることにした。このゴムは文字通り衝撃の減衰率が高く、吸収した衝撃をほとんど熱に変換することができる。この時生じた熱は内殻にてさらに電気エネルギーに変換されて塔の動力の一部となっている。ただ内部構造のブロック間はパイプが通っているからとの理由から使われることはなかった。