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「ええと・・・
ここ、蓮華のエリアは見渡す限りの蓮華草が売りです。
遠くに見える望楼や、更に遠くに霞む風車を眺めながらのんびりするのがお勧めです。
そのまま地面に座るもよし、寝転ぶもよし、歩くもよしです。
ですが、一面の蓮華草が売りなので風除け雨避けがありません。
曇りや雨の日はお気をつけ下さいね。
あ、あと、蓮華を摘んで蜜を吸った人も居るかもしれませんが、ここでは摘まないで下さいね?
そのかわりと言いますか、レンゲはちみつでしたら販売しております。そちらはぜひお土産にどうぞ!」
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「(い、言えた。上手いこと言えた!どうだ!)
ど、どうでしょうか?」
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「他には何が?」
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「え、ええとっ!」
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「蓮華の花言葉は『幸福』や『心の安らぎ』。
愛する人と『幸福』や『心の安らぎ』に包まれながらのお昼寝や散歩はきっと気持ち良いですよ!
また、神話やわらべ歌、俳句にも読まれるように、古くから人々とのかかわりのある花です。
蓮華関連で、『花は全部女神様が姿を変えたもの』と言う言葉もありますので、摘まないであげて下さいね」
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「上出来だ」
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「よ、よかった・・・(へたり込む)」
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「仕事までは時間があるだろう?」
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「え、は、はい!」
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「俺もだ。時間までここで潰そう。あぁ、それと」
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「はい?」
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「その格好も可愛いぞ。コレだけで来た甲斐があった」
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「か、可愛くない、可愛くないですよ!?」
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「・・・・・・(蝶子の口を塞ぐ)」
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それから、数刻後。
双方共に仕事の時間となる。
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「そ、そろそろ、時間、ですね!」
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「そうだな」
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蝶子の髪を弄りながら答える惣一郎。
どう見ても仕事をする気がない。
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「ま、まだ、物騒、ですよね!」
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「あぁ、そうだな」
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蝶子の頭を撫でながら答える惣一郎。
いつの間にか蝶子は抱きかかえられている。
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「だから、その」
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「俺と一緒に居るのは嫌か?」
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「あうあああああ」
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蝶子の反応を楽しみながらちらりと視線をそらす惣一郎。
少し顔を顰めるが、直ぐに戻して蝶子を見る。
この人物、蝶子の前では微笑を絶やさない。
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「その、あの、しごと、仕事がぁー」
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「そうだな」
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そういって蝶子を抱えたまま立ち上がる。もちろん、お姫様抱っこだ。
そのまま暫く歩き、蝶子を降ろして向き合う。
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「?」
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「キスしてもいいか」
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「その、いきなりですね」
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「ダメか?」
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「・・・・・・」
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『そう言われては断れない』と言うのを見透かしているかのような聞き方に、色々なものを感じつつ頷く蝶子。
頷く蝶子を見て、微笑む惣一郎。
いろんな意味でお似合いのカップルである。
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「キスしたら仕事に行く。それで良いだろう?」
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「ううう・・・何か負けた感じです」
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「・・・その、なんだ」
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「はい?」
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「流石に恥ずかしい。眼を瞑ってくれ」
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「は、はい・・・」
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眼を瞑り、少し顔を挙げ、腕を後に回す。
そして、相手の出方を待つ。
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〜一分経過〜
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「(さ、さすがに改めて言われると恥ずかしいですよね)」
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〜三分経過〜
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「(と、途中で眼を開けると余計恥ずかしそうです・・・)」
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〜五分経過〜
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「って、流石に長いですよ惣一郎!恥ずかしすぎです!」
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そう言って眼を開けた蝶子の前には、誰もいなかった。
見渡しても、誰もいない。どこかに隠れるにも見渡す限り蓮華草しかない。
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「え?あれ?惣一郎?」
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答えるものは誰もいない。
蝶子の傍を一陣の風が通り抜けた。
急にオロオロしだす蝶子。
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「い、一緒に居てくれるって言ったじゃないですかー!」
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叫んでも、誰も答えない。
時間のせいか、人の通りも殆ど無い。
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「いや、きっと仕事です!急な仕事です!揉め事です!春の園を探せばいます!」
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誰が聞いたわけでもないのに叫ぶ蝶子。
おそらく自分に言い聞かせているらしい。
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「そうです!ガイドをしながら探せばきっと!きっと!
負けません。蝶子は強い子頑張る子!弱いとか言わせません!」
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どう見ても空元気だが、そこは気にしないでおこう。
こうして、ガイド蝶子の大冒険(?)が始まる。
果たしてヤガミはどこに行ったのだろうか?
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