梅の園
     

「惣一郎はいったいどこなのでしょう(いじいじ)
 …はっいけないっ、私にはガイドの仕事があるんです!
 まずは深呼吸…すーはーすーはー」
「つ、次は梅の園になります。  ここは他のエリアと違って、あまり周囲の見通しがよくありません。
 エリア内でわざと高低差を作り出しているためです。
 そのため、梅が周囲一面を覆うような景色を楽しむことができます。
 周囲から隔絶された、静かな雰囲気を楽しむのにいいエリアですね。
 また梅の園の外周に近いエリアでは
 一面の梅という景色にならない代わりに、野点を楽しむこともできます」
「(小声で)蝶子がんばった、うん!」
「それでは、梅の園を案内いたします」


「もう少し歩いてくださいね……ここです」
「ここに、座っていいのでしょうか」
「座るために、椅子に緋毛氈を敷いてあるんです。
 休憩所兼お茶を楽しむところにしてるとか」
「それで、お茶を点ててくれる人がいるわけですね」
「ここで待っててください。2人分もらってきますね……おまたせ」
「ここは梅の園というんですね。
 この場所にまっすぐ来てしまいましたが、他にはどういった場所があるんですか?」
「それは、ええと…
 あ、あそこにガイドさんいるから説明してもらいましょう!
すみませーん」
「は、はいいぃ! なんでしょうか?」
「梅の園ではここにまっすぐきちゃったんですが、このエリアについて教えていただけませんか?」
「それでは(コホン)。
 ここ梅の園は、春の園の中央部にあたります。
 他のすべてのエリアに隣接しているため
 梅のエリアの外周部を歩くと、全エリアを眺めることができます。
 専用の散歩コースもあるくらいですね。
 外周近辺に、ここのような休憩所があるのもそのためです。
 2人でお散歩しながら、どのエリアに行ってみたいか検討するのもいいですよ。
「あとは…そうですね。
 梅の園から東西南北に位置する蓮華の園、桜の園、苺畑、たんぽぽの園には
 それぞれ望楼が存在しています。
 霞がかった天候と梅の園の起伏のため、  ある望楼が見える場所から、別の望楼は見えないのです。
 でも実は、梅の園の中央からは、時々天気がいいときに、全望楼の姿を見ることができます。
 見ることができたら、願いがかなうなんてことも言われてますね」
「…こ、こんなところでよかったでしょうか?」
「ありがとうございます。
 後で中央の方にもいってみましょうか」
「でも、体は大丈夫ですか?」
「ここの空気がいいからかな。今ならもう少し動けそうです。
 それに、花の中にいる貴方はとても綺麗だと思います」
「!? ああ…な、なにをあの…うわーうわー。
 ええと、それじゃあ行ってみましょう。
 ガイドさん、近道…じゃないな。あまり高低差のないように、中央部までいく道はありますか?」
「ちょ…ちょっとまってください」
 (メモに書き込み中)んーと、こっちからこうまわりこんで…できた!
 ここが今の地点で、ほぼまっすぐ進んでいくんですが、途中で急な坂があるからこれをよけて…」
「ありがとうございます」
「具合悪かったらすぐに言ってくださいね」
「大丈夫です、無理はしませんよ」
「あ、あとですねっ。
 ここのお茶は、点ててもらうこともできますが
 できるのでしたら、自分でお抹茶点てることもできますよ」
「そうなんですか。でも、私は教わったこととかないし…」
「では、私がやりましょうか」
「ええっ! できるんですか」
「貴方がここに行こうと誘ってくれたから、教えてもらってきました」
「だだだ誰に? いやそんなことじゃなくって」
「いけませんでしたか?」
「いえ、うれしいです。ぜひぜひ!」
「それでは……すみません、道具を貸していただけますか?」
「うう…ほんとに教えてもらったばかりなんだろうか。手つきいいよね…私ももっとがんばろう。
 花嫁修業にもなるし…きゃっな、なんでもないです(じたばた)」
「はい、どうぞ」
「ありがとう……うん、おいしいです」
「貴方がそう言ってくれて、うれしいです。教えてもらってきてよかった」
「次の機会までには、私もお茶点てられるようになりますね」
「楽しみにしています」

「そそそ、そうだ。聞き忘れていました。
 よろしかったら教えてほしいのですがっ」
「どうしましたか?」
「あ、あのですねっ。
 うちの惣一郎見かけませんでしたか?」
「どんな方ですか?」
「ええとー要はヤガミなんですけども」
「ここに来る途中には見かけませんでしたね」
「苺畑の方に向かってる人がいたけど…その人かな?」
「あ、ありがとうございますっ! それじゃ、私はこのへんで」
「いちごばたけ…ええと、ここからだとほぼまっすぐ進めばよいのですね。
 今度こそがんばるっ!」


蓮華の園桜の園梅の園苺畑
たんぽぽ&クローバーの園望楼小麦畑&風車区画