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「あ、あとはここだけです。
桜、梅、苺、たんぽぽ、望楼全部廻ったけど居なかったから、きっとここです!
そう、ここが最後です。負けません!ガイドの仕事もこなしつつ、惣一郎も探して見せます!
蝶子、ふぁいと! 蝶子は強い子頑張る子!弱い子はもう卒業です!
・・・うう、でも、惣一郎が見つかるなら弱い子でもいいです・・・」
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やっぱり弱い子だった。
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小麦畑の近くは風が強い。
そのため、他の場所と違い幾つかの喫茶店や、コーヒースタンドといったしっかりとした建物がある。
そんな喫茶店の一つに蝶子はいた。
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「先ずは情報収集です。蝶子覚えました。アイドレスでも情報戦が大事でした。
こういうところなら惣一郎の情報も・・・!」
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「あの、すみませんこの当たりでジャンパーをきた・・・」
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「あ、ガイドさん。こんなところにまで居るんだ。
丁度よかった。この辺って何があります?」
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「うぇ?あ、は、はい。少しお待ちくださいね」
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「えー、こほん。
ここは通称『風車区画』もしくは『小麦畑区画』と言われてます。
風車はオランダ式風車で、風力発電などではなく製粉のために使われます。
ですが、ここはご存知の通り春の園ですので、本来ならば小麦は育ちません。
そのため、この小麦畑では改良された小麦種を植え、気温操作をすることで成長させています。
ただ、収穫すると地肌が見えてさびしいことになるので、ここから見えるのは観賞用です。
あちらに見える風車のもっと向こう側は収穫用で、収穫した小麦は春の園の中で使われます」
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「収穫用?」
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「はい。収穫用です。
ただ、その一角だけ秋っぽくなっちゃうので、風車の先は通行禁止です。
無理やり進むとちょっと寂しいことになりますよ?
因みに、この喫茶店も近くにあるコーヒースタンドでもその小麦が使われてます。
スタンドのほうではそれを使ったクラブサンドやパイが出されてます。
ここの喫茶店では・・・えーと」
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「ウチではマカロンがお勧めだな。
色々種類があるが、やはり一番は隣の苺を使ったストロベリーだ。
コーヒーと食べるならチョコもお勧めだがな。
ま、こいつは小麦使ってないんだが」
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「へぇ。面白そうだなー。一つ貰えます?」
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「はい、毎度あり」
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「(このさりげない心遣い・・・プロだわっ!)」
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「あ、ガイドさーん。
チューリップ畑のこと教えてー」
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「は、はい!
チューリップ畑は御覧のように赤、黄、白、ピンクと花の色ごとに分けられています。
チューリップは色によって花言葉が違います。
赤は『愛の告白』。プロポーズにうってつけですけど、そのお陰でけっこう人が居ます。
黄は『名声』『正直』。ただ、場所によっては実らない恋などの意味があるので、片思いさんには危険ですね。
白は『新しい恋』。新しく恋を始める人にお勧めです。
ただし、失恋って意味もあるので、カップルさんは気をつけてくださいね?
ピンクは『愛の芽生え』。他にも恋する年頃って意味もあって、ロマンチックです。
是非、初デートで見て欲しいですね!
他にも色の種類はありますが、一先ずここから見える分で言ってみました」
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「・・・なんか、失恋とか実らない恋とかデートにはちょっと、って思うんだけど」
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「いえいえ、花言葉は所詮受け取る人によって代わります!
信じたものが正義です!悪い占いなんか信じなければいいんです!
当たるも八卦当たらぬも八卦なら当たることを信じましょう!」
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「ま、まあ、意味が違う感じはするけど、ありがとう。ピンクのところに行ってみるね」
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「ガイドさーん」
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「ガイドさーん」
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「は、はい!なんでしょうかー!?」
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「何か他に面白い話ありますかー?」
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「あ、アタシも聞きたかったんです。ありますか?」
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「はい!ええと、じゃあ、チューリップについての豆知識など。
古くは6世紀の終わりには既に存在していたとされます。
一番最初は中東のあたりで育てられてたみたいですね。
それがローマの王様に紹介されるとき、
ターバン(向こうの言葉でチュルバン)と伝わってしまいました。
そこからなまってチューリップになったみたいです。
その後、所謂大航海時代のときにバブルを迎えます。
チューリップは品種の違いで形も色も模様も替わるので、
珍しい球根と豪邸一件なんてのも珍しくなかったそうです。
オランダのアムステルダムには、専用の取引市場まで出来たらしいですよ。
本来は冬の間だけ、『球根と何か』の取引が行なわれていたのですが・・・民衆は更なる取引を求めました。
そして、バブルは終焉をむかえます。
取引を広げすぎた結果、誰が誰に売ったか、誰にどの対価を渡したか、
そして、その騒動で買い取り手が激減した。
その結果、価値が100分の1程になりました。が、それでもパニックにはならなかったみたいですね。
結局、好きな人はどんな値段でも買い取った訳ですね」
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「へぇ、そんなに凄いのか。あ、じゃあ、オランダにチューリップが多いのはそのせい?」
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「そうですね。アムステルダムに専用の取引市場が出来たのも、
オランダがチューリップ栽培に適していたからなんです。
冬の寒い時期を越えてこそ、美しく咲く。そんなチューリップはオランダにぴったりだったんですね。
そのお陰で、現在も品種改良が進められているそうです」
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「冬が寒ければ寒いほどかぁ。アタシにも春が来るのかしら・・・」
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「ガイドさーん」
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「は、はーい!
(よ、予想外です。コレはチョット限界!?)」
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「ガイドさーん」
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「(助けて惣一郎ー!)」
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「うう、限界です。すいません、お水を一杯」
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「嬢ちゃんがんばったなぁ。どこで覚えたんだ?」
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「(ギクリ)え、ええと、先生が優秀なんです」
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「そうか。まぁ、ホットミルクでも飲んで落ち着きな。
そら、さっきのマカロンもサービスだ」
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「ううう、良い人がここに・・・」
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「で、誰か探してるんじゃなかったのか?」
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「そ、そうです。すいません、眼鏡かけてて、警備員の腕章してて、ジャンパーきてる人見ませんでしたか?」
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「(外を見て)それは・・・小麦畑のど真ん中でたたずんでる彼かな?」
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「!?(慌てて外を見る)
あ、あれです!あんなところに!そーいちろー!」
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「結局、一口も食べてないか。
いやぁ、若いねぇ・・・(しんみりしつつ)」
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