「ねぇ、ソウさん、紅葉が綺麗ね」
「そうだな」
私の言葉に上の空なソウさん。新聞がそれ程大事なのだろうか? などと思ってみたりもしたけれど、それが結果的には私たちに直接降りかかってくる事、情報の収集が生活へとダイレクトにかかわってくるのは確か、だから情報集めを邪魔する気はないけど……。
「ソウさん。あっちに湖が見えるわ」
「そうだな」
そう、結果的には私を守るために情報を集めないと色々な事ができない。それはわかるけど……。
「ソウさんのいけず」
「そうだな」
今日発売の新聞だから最新情報載っているし、へたをするといつ危険がせまってくるかわからないから熱心に読むのはわかるど……。
せっかくのデートなのに。これでも結構旅費かかってるのに……。
私の目に隣で一緒に歌っている親子が見える……。
「ねぇ、ソウさん……」
「そうだな」
同じ返事をするソウさんにいたずら心が私の胸に芽生えた。
「ねぇ、ソウさん、私、子供が欲しいかな?」
「そうだ……な!?」
その時のソウさんの顔は驚きの顔だったけど、すぐに真っ赤になり、汗をダラダラ流し始めた。
「ソウさん?」
「……あー、うん、じゃない、えっとだな」
目をグルグルさせ始めたソウさんを見て少しかわいそうだったかな? とも思ったがやっとこっちを向いてくれた事が嬉しかったので私は気にしない事にした。
「ソウさん、もう少し上まで登ってみましょ?」
「あー、うんそうだね」
先ほどの言葉に動揺してか言動がおかしくなり始めるソウさん。もし、ソウさんがもう少し上に登った先に噂のラブベンチがあると知ってたらどう返事してたんだろうな? とも思ったが、今日はデートである。
罠だ!
とか後で文句を言われるかもしれないけど、そんなこと私の知ったことではない。
「じゃあ、上まで行ってみましょ?」
立ち上がった私につられるようにソウさんが立ち上がった。そんなソウさんの手を私は握り、先行した。今日という日はまだ始まったばかりである。