おすすめスポット

龍星川

恋人たちや家族の憩いの場

龍星川
紅葉とのコントラストが見事
 秋の園は水に大きく関わっている園といえる。
 その象徴として巨大な滝があり、龍青神社があり、それに次ぐシンボルとして大きな河がある。
 龍青神社を水源とし、のわき園に隣接する湖へと注ぐ渓流、龍星川だ。
 秋の園を上から下まで貫くこの河を知ることは、秋の園を知ることにもなる。
というわけで、この龍星川を紹介しよう。

 神社から湧き出た水は次第にその量を増して行き、やがて川となる。
 水の力は偉大だ。流れができていく過程で土を削り、岩を掘り起こし、それを運んでゆく。
 運ばれた岩は道を作り、その一部は流れの中にとどまって流れを新たに作る。
 それが繰り返されて渓谷となり、その流れは渓流となる。
 こうして龍星川はその姿を作って行ったのだ。

 しかしこの龍星川、途方もなく大きく育った。
 下流、といっても急流の範囲を超えないのだが、そこでも川幅は100mを越えている。
 水の勢いを保ったままここまでの川幅を持っている川はなかなかない。
 皆さんもこれを見たときはやるじゃないか龍星川といってやって欲しい。
 これくらいの位置ではまだ大きな岩がところどころに顔を出している。
やろうと思えば岩を飛んでいって向こうの岸まで行くことも出来るが、 一歩間違えれば急流に流されていってしまう。
……といったことはない。安全のため見えないように巧妙に隠されたロープがある。
 魚の動きを極力邪魔しないため数が少なく、掴まるのも一苦労ではあるが。
 だが、カップルの方々には是非このスリルを味わってもらいたい。
 困難を共に乗り切ったことによって2人の絆も強く結ばれること間違いなしだ。
 なお、近くの土産屋では服も売っているので落ちたとしても安心して欲しい。


龍星川
美しい滝も随所に見られる
 もう少し下ればその川幅はさらに広がり、流れも穏やかになる。
 湖に注ぐ近くにもなればその川幅は200mを越え、河原と呼べるものもできてくる。
 ここまでくれば流される危険は少なくなり、水浴びをすることも出来る。
 河原でキャンプをすることも可能だが、水を汚すと言うことで厳しく規制されている。
 水源に近いだけに水への気遣いは徹底しているのがこの園の特徴の一つだ。
 ただ、子どもたちが自然と触れ合う機会を減らすのは忍びない、と宰相が言ったかどうか定かではないが、
 連休などの限られた期間だけキャンプ場として解放されるのだ。
 シーズン中には親子連れで賑わい、宰相府やその近隣に勤めるものの憩いの場となっている。

 そんな恋人たちや家族の憩いの場となっている龍星川であるが、美しさもまたひとしおである。
 遠くに見える赤と黄金色。そして川の上を流れる紅葉。
 静の赤と動の赤。
 そのコントラストが見るものの心にえもいわれぬ感動をもたらす。
 秋の園で最も美しいと言われる景色の一つであり、見た人全ての足を止めると評判のスポットだ。
 その中でも宰相府のオススメは銀杏並木を過ぎた辺りである。
 山を一望でき、また紅葉も程よい速度で流れてゆく。
 遠くには上層から落ちる滝もうっすらと見え、秋の園を象徴するものが全て視界に収まる素晴らしい場所だ。
 写真を撮るのもよいが写生をするのもお勧めである。絵を描くのが好きな人にはたまらないだろう。

 このように、見るも素晴らしい龍星川。
 神社や紅葉ばかりではなく、どうかこの渓流にも目を向けてもらえれば幸いである。

ある日の秋の園風景

ある日の秋の園風景
「ねぇ、やめようよー」
「だーいじょうぶだって」

 俺は彼女と2人で渓流の川岸にいた。
 俺の視線の先には飛び飛びにある岩。それが向こう岸まで続いている。
 川を橋を使わずに向こう岸までいけるなんて、何と言う素晴らしいスポット!

 男なら 飛ばずにいれるか こんちくしょー

「絶対途中で落ちちゃうって」

 が、女には理解されないみたいだ。
 このロマンは男の子ソウルを持った人間にしか分からないらしい。
 しかし!俺には秘策があった。

「大丈夫!お前は俺が受け止めてやるから!」
「………ほ、本当に?」

 必殺『男の逞しさアッピール』
 今まで使う機会はなかったが、ここで使わずいつ使う!
 むぅ、まだ迷っているらしい。さらに後押しをせねば。

「俺がお前を落とすわけないだろ?安心しろって」
「そ、そこまで言うなら………ちゃんと受け止めてね?」

 計画通り。
 と、どこぞの神みたいに変に笑うことなく、爽やかに微笑む。
 この観光ガイドにも書いてあったし、ここで2人の仲を急接近!させてやる。

「任せとけって!じゃあ、行くぞ」
「うん!」

 まず俺が飛ぶ。
 おっと、意外とバランスとるのが難しい……が、大丈夫。
 ここを飛び越えて行ったカップルもいるそうだし、いけるだろう。
 うし、覚悟は決まった。彼女に手を伸ばして待機する。

「よし、来いよ!」
「う、うん……えーい!」

 彼女が飛んだ。
 あれ?意外と勢いがある。
 う、受け止められるか?
 一瞬の内に考えは巡ったが、答えを出すほどの暇はなかった。

「おぷっ!」

 そんなこんなでも、どうにか彼女を抱きとめた。あ、やわらかい。

 が、人一人分の衝撃は思いのほかでかかった。
 一歩後ろに下がってしまうほどに。
 そしてそこには、岩はなかった。
 その瞬間、俺は理解した。

 ああ、あそこの土産屋に服が売っていたのって、こういう理由なのね。

 財布が防水であることを祈りながら、俺は水の中へと沈んで行った。
 彼女を抱きしめたまま。

 あ……後で彼女に怒られる。