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【アーチ】


白薔薇アーチ

 薔薇のアーチは突然目の前に出現する。
 冬の園を初めて訪れた者がよく口にする感想である。
 アーチは高さは5mもあり威風堂々としているのだが、赤・白・ピンク・黄・黒・橙・そして青―――足元で豪奢に可憐に花開く珍しい薔薇に目を奪われていると、その真下に来るまで気付き難いらしい。

 薔薇のアーチは白薔薇のアーチと赤薔薇のアーチの二種が存在している。
 どちらも途中に存在する休憩所を兼ねた小広場を通り抜けて、先にあるカフェへと誘う。
 また、アーチの間はかなり離れている上に薔薇以外の常緑樹などで仕切られていて、赤白のアーチの中から互いの様子は窺えない。

 アーチの骨格は白く繊細なスチール又は大理石に見えるが(実際、幾つかの柱は製作者の遊び心でカメオのように薔薇の彫刻が刻まれている)、触れると金属や石の冷たさは感じられない。
 実際は中空になっており、中には地下から汲み上げた温泉が流れている。
 冬の園の薔薇は品種改良によって寒さに強いのだが、それでも薔薇そのものが平均気温がマイナスを超えると枯死しかねないので一定の温度管理が必要な為、このような構造になっており、また、来訪者が冷え込まない暖房の役目も兼ねる。
 この温泉はそのまま通路の地下を流れているので、アーチ全体を温め、花が雪で埋まることの無い仕組みになっている。


アーチ内側

 アーチの天井部分を繋ぐ骨格もまた薔薇の文様であり、絡み付く小さな薔薇が空に大きな薔薇を描いている。
 昨今の治安の問題から骨格の間には防弾の色ガラスを埋め込みステンドグラスにする案も出ているが、空が見える現在のアーチを惜しむ声もあり、検討中である。
 一つのアーチの入り口から出口までの距離は短いもので数m、長いものだと10m近くに及ぶ。
 長いアーチの出口は小広場を兼ねた休憩所に繋がっており、短いアーチは白薔薇のアーチの先にある小道に多い。
 赤薔薇のアーチは、まっすぐ続いている。瀟洒な花そのものを愛で、静かに会話をすることに向いている。休憩所も広く低い設計である。
 逆に白薔薇のアーチは間隔が短い。これは途中の休憩所が庭園をイメージしている為に、通路脇に小道があったり階段や起伏も多く、歩くことそのものが楽しめる構造ということによる。


 ちなみに薔薇園とカフェの間を区切る常緑樹の小さな林を通り抜ける小道が薔薇のアーチなのだが、この林が図では省略されている。
 普通の道と管理施設への道を区別するため、管理者が遊び心で道の脇にも小さな薔薇を植えたのが薔薇のアーチの由来だったという。
 その為、案内板が作成された建設当初はただの通路として地図にも載せられなかった。
 尤も、来訪者からの人気が高かったこともあり、現在では案内板の横の説明書きにも記載されており、冬の園入り口で無料配布されているパンフレットには略図ながら薔薇のアーチのことも描かれている。

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入り口案内板薔薇園アーチカフェスキー場氷結森出口