【薔薇園】
薔薇園俯瞰図
そうまでして維持されるこの薔薇園を真の意味で楽しむためには、実際にその土を踏み、見るだけでは足りない。
訪れたものはわかるだろうが、薔薇園は各花壇が過剰なほど湾曲しており、鑑賞には向いているとはお世辞にも思えないうえに、芸術性が感じられるわけでもなく、ただ適当にそれっぽく作られていると思われがちだ。が、それは大いに間違いである。
これらの意味のないように思える花壇の作りは、同じ区画内にあるスキー場から見下ろすことで、即座に理解することができる。
高所から見れば花壇が花びらに、中央に設置された売店のハート型をした屋根が花弁となり、花壇自体が一輪の薔薇になっているのだ。
また、観賞用の品種改良、つまり匂いの成分を少なくした種の薔薇ではないため、芳しい匂いによって、視覚とともに嗅覚をもこの園は楽しませてくれる。
悲しみも、疲れも、何もかもをこの園はきっと吸出し、あなたを癒してくれるだろう。

マンホールデザイン
そして薔薇園の中で、ひそかに名所として知られる場所がある。
というか迷所と書いてもいい気がしないまでもないのだが、名所なのだ。
それがそう、マンホールである。
広大な薔薇の園を維持するためには相応の下水設備も必要であり、それと地上をつないでいるのがこのマンホールだ。
それだけでは何の変哲もないマンホールなのだが、薔薇の園にあるマンホールの蓋には美しい茨とつぼみ、小鳥の羽が描かれたレリーフが施されており、建築者の細かなこだわりと、その技巧を覗き見ることができる。
しかしそれでもやはりマンホールはマンホール。園のいたるところにあるとはいえ、色とりどりの美しい薔薇がどこに視界を向けても入ってくるのだ。
美しいレリーフだけでは、残念ながらそうそう有名になるようなものではない。
このマンホールが有名になったことには、一人の男が起因となっている。
皆さんご存知、某黄色ジャンパーを羽織った眼鏡の君である。
彼がこの地を訪れた際、どういうわけかここから現れたことで一気にこのマンホールの存在は有名になった。
どうやらこのマンホール、宰相府の外へも繋がっているようであり、某眼鏡の君は、極秘でこそこそと訪れていたのかもしれない。
もっとも、単に迷っていたという可能性も否定できないため、定かではないのだが。
兎に角、形はどうであれ彼のおかげで有名になったこのマンホール、訪れた際はぜひその細部までこだわり抜かれたデザインを見ていただきたい。

「え…?外部から簡単に出入りできる?」
「失礼な!当園は下水施設にも警備の手は抜いておりません」
「もちろんあの眼鏡の方の存在もチェック済みでした」
「・・・・でも真似をするような方が増えては困りますね」
「あとでセキュリティチームに言っておきましょう」
「帝国が誇る冬薔薇園の出入り口が下水なんて・・・なんて!」
「(なにか黒いメモ帳に名前を書き込んでいる)」
「さて、次はどこへ向かわれますか?」