しかし、広大なスペースである内部ブロックのほとんどを占めるほどの大きさの炉でも地上の地盤と地下の地盤に位置するブロックに一つずつ、計二つなければ水の塔は動かないのだ。万が一この炉が止まった場合に備えて、塔の各所に予備発電機が備え付けられている。発電機とはいっても内部ブロック一つがそうなのだから、ちょっとした発電所だと考えていい。しかしいくつもある予備発電を総動員しても3日しか持たない。このことからも水の巨塔というものには途方も無いエネルギーが必要だと言うことが分かる。
コントロールルーム
内殻からコントロールルームへの入り口はそのまま通路になっている。T字になった通路が左右のエレベーターに直結しており、犬士たちはそこから担当の階層まで移動する。エレベーターから降りるとそこには各階層ごとに専用のサーバーが並んでいる。それを横目に見つつ、床とほぼ同化したオートウォークで犬士たちは自分たちの席まで移動する。操作席は変形したコの字状になっており、パッと見た目にはモニターが無いように見える。しかし犬士が席に着いて席を起動させると半透明のモニターが空中に投影される。その様はさながら宇宙船のオペレーター席のようである。
操作席の床は円弧側の壁からブロックの半分までせり出しており、右半分しかない階層と左半分しかない階層が互い違いになって全26階層を構成している。操作席の床は閉塞感の解消と水の塔ということもあり半透明になっている。人間が歩くこともあるが、女性が歩くときはその人を感知し、自動的に足元が不透明になるという配慮もなされている。中心側の壁には全ての席から見えるほどの大型モニターが設置されている。このモニターには電力消費量や水量などの塔全体のデータが表示される。そのモニターと操作席の間には塔を模した柱が左右の階層の前に一つずつ立っている。直径10mほどのこれはエレベーター兼モニターであり、塔外部の映像がリアルタイムで流れている。異常があればこのモニターの色が変わり、それを見て操作席の犬士達が対応するという流れになっている。