月と星がかげりのない宵闇のスクリーンに映し出される白い夜。果ての砂漠において最も幻想的かつ、美しい風景が広がる時間帯である。
 夜の砂漠は空だけでなく、月光によって地上の砂も白く光り輝き、見るものをけして飽きさせることはないだろう。
 しかし、美しいものほど棘はある。
 急激に気温の下がった夜の砂漠は、防寒具を持たない者には容赦ない死をもたらしかねない。加えて、天体が不規則な動きを見せる果ての砂漠においては、進むべき方向の指針も定まらず、その危険は他と比較できない。
 しかしその危険を知った上でも、夜の砂漠を好んで進むものは少なくはない。それほどまでに旅人を魅了するなにかが、この風景には隠されているのだろう。


 果ての砂漠の見所は昼夜2つの顔だけではない。
 砂漠特有の現象に加え、普段見慣れた風景でさえ、砂漠から見たものは芸術品へとその姿を変えるのだ。

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