「? ああ、砂龍ってのはな。龍の巣みたいに砂の粒子が細かい地中に生息してるやつで、この砂海を”龍の巣”って呼称する所以みたいなやつだ。
 何を食ってるのかは知らねーが、一説じゃ砂を食って細かくしている。つまり龍の巣のようなのが出来た原因は、こいつらだっていう説もある。まあ解剖してみても生態系がいまいちよくわからんらしいからな何とも言えねーんだが。
 まるで海を泳ぐ魚みたいだからこういう名前がつけられたそうだ。だが、外見は爬虫類とも取れるような感じでな。魚って言うには、ちょっとあれなんだ。
 だから俺みたいにある程度知ってるやつらはなんのひねりもなくただ砂中に潜む龍みたいなやつだから砂龍ってことにしてる。こっちのほうが簡単だし、ロマンがあるじゃねえか。相対してみろ。まるでゲームの主人公にでもなった気分だから」

 少年のように彼は笑う。私がどういう反応をすればいいのか困っていると、彼はやれやれといった風に話を再開した。

「ロマンを語っても仕方ねえみてーだから、少し砂龍について語ってやるとするか。
とは言ってもまあ、さっきも言ったとおり詳しい生態系なんて誰も知らねーから、見りゃわかるようなことぐらいなんだけどな。
 まずあいつらには手足は無い。いや、足みてーなのは一応あるが、なんつーか河童とか居るだろ? あれみたいな感じにヒレがついてる。おそらく砂の中を進むためにでも発達したんじゃねえかなあ。
 んで、外皮は案外硬い。深いところまで地面を潜れば、圧力もそれなりだからだろう。口径の小さい拳銃やらナイフみてーな刃物じゃ話にならなかったぐらいだ。おかげで狩人の武装には、ハンマーみたいな内部に強い衝撃を与える打撃系のやつか、対物狙撃銃とか徹甲弾みたいなのばかりが使われてる。
 話が反れたな。で、こいつらなんだが、地中っていう真っ暗闇の中でも行動出来るように、眼、つまり視覚よりも聴覚に優れている。まあ、優れているってレベルの話じゃないんだけどな。何メートルもの地下に居るのに、地上を歩く足音やらを察知出来るんだ。尋常じゃない。
 んで、こいつらはよっぽど餓えてんのか、何でも喰う悪食な野郎でな。獲物を見つければ迷わず飛び出してくる。俺もダチをひとり持っていかれた」

 私がどこに? と間抜けな問いを返すと、彼は苦笑しながら足元を指差した。

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