■軍港カレーフェスティバル■
《ファヴール軍港カレー》
○月×日 PM11:00 「とある彼女の事情1」
明日は1ヵ月振りに彼と会える。
軍港で働く彼とは1年前に偶然に知り合った。
当時、親友のA子が付き合っていた彼氏を紹介すると言って、宰相府藩国にある軍港に連れて行かれたのを覚えてる。
なんでも、その彼氏は軍人で、軍港で整備を担当していると言っていた。
「彼の指って、なんだか油臭いの。あれって仕事のせいかなぁ」
やけに幸せそうな顔で、彼氏自慢を長々と聞かされたのを覚えている。
「でね、でね。明日、軍港カレーフェスティバルってのがあるんだけど、彼を紹介したいから一緒に来ない?」
惚気話に適当に相槌を打ちながら別の事を考えていた私は、はずみでつい「うん」と言ってしまった。
「じゃあ、決まりね。明日、8時に迎えに来るからね」
なんだか強引に決められてしまったけど、A子の幸せそうな顔に「まあ、いいか」と思ったのを覚えている。
見ているこちらが、思わず微笑んでしまうような、本当に幸せそうな顔だった。
○月△日 AM7:00 「とある彼女の事情2」
6時に掛けた目覚まし時計と格闘しつつ、早起きをした。
さすがに気合を入れておしゃれをしたい。
朝からお風呂に入って、香料入りの石鹸を使って身体を洗う。
自分がこんなものを使うなんて1年前までは想像もしなかった。
お風呂を上がると、昨日の晩に用意しておいた服を着る。
軍港へ行く電車には8:30に乗ればいい。
さすがに早く起きすぎた。と、くすくすと笑い、余った時間を使って、お茶を用意していく事にした。
最近、はまっている紅茶の葉をビンに詰めて、天然水を冷蔵庫から出す。
ヤカンに入れて沸騰させると魔法ビンへ移す。
それを鞄へ詰めて、カレーだけじゃちょっと寂しいかなと思い、サンドイッチも作って持って行く事にした。
○月△日 AM9:00 「とある彼女の事情3」
サンドイッチを作っていて、すっかり時間に遅れてしまった。
なんのために早起きして、お風呂に入ったんだろう。
荷物を抱え、駅構内を必死に走る。
トゥルルルル
電車の出る音がした。
階段を飛ぶように下り、閉まり掛けたドアに身体を無理矢理ねじ込む。
駆け込み乗車はいけないんだけど、ごめんなさい。
なんとか間に合った。
汗を拭きながら、息を整える。運動不足になってるなぁ。どうりで体重が増えてるはず。また、ダイエットしないと駄目ね。
○月△日 AM11:00 「とある彼女の事情4」
もうすぐ軍港へのシャトルバスが出ている駅に着く。
胸の鼓動がちょっと早くなってきている。
仕事柄そんなに頻繁に会えるわけではないから、今日は楽しい一日になって欲しい。
そう、彼と出会ってちょうど1年になる。
彼氏を紹介したいA子に連れられて、軍港カレーフェスティバルへ行き、そこで彼女の彼氏の友達である彼に会った。
「間が持たなくってさ…。彼もなんか緊張しちゃって…。お願い。しばらくでいいの。付き合ってくれないかな…」
いや、あんたが上目遣いで頼み事は、まずいってば…
そっちの気は無いけど、くらくらしちゃうから!
で、結局、しばらく付き合う事になった。
後から聞いた話では、彼も友達に懇願されて断われなかったそうだ。
何回かデートに付き添って、なんとも微妙なWデート?を繰り返した。
彼はWデートの間、なんともつまらなさそうな顔をしていた。でも、友達が幸せそうにしているのを見ると、時々微笑を見せる。そういう人だった。
たぶん、そんな所に惹かれたのだと思う。
しばらくして、2人から誘われずWデートが無くなって、私は寂しく感じた。
それは、彼も同じだったらしい。
携帯を睨みながら、掛けるべきか悩んでいた時に彼から電話があった時はとても嬉しかった。
そう、あれから1年経ったんだ。
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○月△日 AM10:00 「とある料理人の事情1」
大鍋に入ったカレーをオールみたいなもので掻き回す。
毎度の事とはいえ、連続3日間もひたすら同じ料理を作るのは料理人として、飽きる…。
とはいえ、小さい子が美味しそうに食べてくれるのを見ると、心が洗われる。
日頃、お腹を減らした食欲魔人共を相手に料理と格闘しているのとは違って、感動してくれる様子がたまらない。
料理人としては、作った料理を美味しそうに食べてくれるのが、一番の幸せだ。
だが、がっついて食べてるのと、味わって感動してくれるのとでは、喜びに差が出来てしまう。
だから、そんな笑顔を思えばこの単調な作業も頑張れる。
いよいよカレーフェスティバル開催!
カレーを食べに行きますか?
はい
いいえ