帝國軍事院

付け焼き刃の軍事講座 後編(曲直瀬りま@FVB/聞き手:きみこ@FVB)

戦うための6つのポイント

情報

『敵を知り味方を知れば、危うい戦いはない』
 ★動員するのも、戦場で有利な位置に陣取るのも、すべて情報次第。
 ★地形を熟知し、戦場には自軍が有利となる場所を選ぶこと。
 ★何があっても即座に対応できるよう、常に警戒すること。
 ★戦場に集まってくる情報は、常に不確実なものであると認識すること。
 どれだけ綿密に計画を立てても、絶対に予定通りにはいきません。そのために、目や耳をそばだて、何があっても即座に対応できるようにしないといけません。

動員

『常に敵より多くの戦力で戦いに臨め』
 ★いつでもちゃんと装備を調えた兵を動員できるよう事前の手配は怠らない。
 ★敵の数が多ければ分断することを考えるとともに、味方の戦力は集中させること。
 つまり、数の多い方が勝つから、そのために味方同士は連携しないといけませんという、当たり前の話です。

連携

『味方は常に連携しろ』
 ★部隊の指揮は一本化し、相互の連絡は密にすること。
 ★命令は解りやすく簡単にし、目標や目的を周知徹底すること。
 ★目標は明確にして、途中で変更しないこと。
 連携するためには、あちこちから命令が出て、誰のいうことに従ったらいいか解らなくなるような組織にはするなということですね。

機先

『戦いは味方のペースで進めろ』
 ★先手必勝で、戦いの主導権を得ること。
 ★相手の予想しない場所を攻撃するように心がける。
 戦場の上空から敵の航空機を排除できれば(航空優勢)、戦いは終始有利に進められます。それは海上でも同じです(海上優勢)。先に戦場に到着すべしという言葉が出るのも同じ理由です。

機動

『可能な限り動き回れ』
 ★機動力を維持することで、相手の先手をとれる。
 ★迂回されるな、迂回しろ。
 ★味方後方の補給線の安全を確保すること。
 ★敵後方の補給線でゆさぶりをかけること。

士気

『味方の士気を上げ、敵の士気をくじくこと』
 ★敵が負けたと思い、味方が勝ったと思うときが勝利。
 ★味方が優勢であっても進みすぎるな。
 勝ち戦であっても攻勢限界は把握すること。誰でも勝ち戦で死にたくないですからね。それでなくても、進撃が続けば、隊列が崩れる、疲れる、補給が遅れるなどの障害が発生してきますからね。


腹が減っては戦ができない〜後方支援を考える

兵站

 技術アイドレスに「陸軍/海軍兵站システム」などというものがありますが、武器弾薬から食料や燃料までを輸送し、補給し、整備する、戦力を維持するためのサポート全般を「兵站(へいたん)」と言います。「戦いは数だよ、アニキ!」は良いけれど、集めた戦力を維持するには兵站が不可欠なのです。
 アイドレスでは、戦闘参加するたびに膨大な量の資源や燃料を消費するのでやりくりに泣きましたが、現実に生身の兵士であっても、1人を戦場に送り込んで戦わせるには、1日あたり約100Kgの補給が必要だそうです。
 必要な物資を必要な量だけ備蓄し、必要なときに必要な場所へ送れるかどうかで戦いは決まると言っていいでしょう。それくらい兵站は重要です。

輸送

 「長距離輸送システム」という施設アイドレスがありますが、「兵站」の重要性が解るなら、それを支える「輸送」の重要性も理解してもらえると思います。アメリカなどは「輸送軍」という輸送専門の軍を持っているくらいです。
 さて、アイドレスの「長距離輸送システム」はディーゼル機関車による鉄道網のようですが、確かに陸上での長距離・大量輸送には、鉄道は大きな力を発揮します。けれども、鉄道輸送が万能でないことだけは覚えておいてください。
 たとえば、国ごとに鉄道の軌道の幅が違う場合もあるので、国境を越えるごとに積み替えるなり台車の変更作業をしないといけないとなると、積み卸しの作業などで大騒ぎ。第二次大戦でも列車単位で行方不明になるのはざらだったそうです。また、線路のある範囲でしか列車は使えませんし、線路の爆破も簡単で輸送が簡単に滞るため、イメージほどの万能ではないとも言われています。

【きみこ】「アイドレスって、軌道の幅は関係ありませんよね?」
【まなせ】「関係ないね。まあ、万能では無いってことを説明するための一例ね」
【きみこ】「ふむ」

輸送艦/輸送船

 イラク戦争の開戦までは、アメリカ軍は空輸中心に輸送計画を立てていたそうですが、いざ戦争となったら航空機より高速輸送船の方が使い勝手が良かったそうです。それくらい、今の時代でも輸送艦は「輸送」の要です。
 さて戦闘時の上陸では、のんびり港に陸揚げもしていられません。物資積みおろし時は無防備となりますからね。そこで、民間商船を徴用した輸送ではなく、軍用に開発された輸送の場合、揚陸艦という別名のように、港のない場所にも兵や物資を運び上げられるように艦の前部が開くようになっていることが多いようです(フェリーボートを想像してもらえれば、おおよそ正解です)。それでも太平洋戦争中には日本軍もアメリカ軍も、同じように積み降ろしには苦労していたようです。
 ところが、結局最後まで人力でのたのた作業をするしかなかった日本に対し、アメリカは「ならトラックに荷物を載せたまま輸送艦に載せ、そのまま上陸させれば簡単じゃないか!」と、さっさと考えて実行してしまいます。兵隊は経験が無くて弱くて失敗ばかりだけれど、失敗したことはすぐに対策をマニュアル化し、どんどん実行できる国力のあるアメリカが勝ったというわけです。

配備船

 1980年代にアメリカが導入した、洋上補給所。
 アメリカの基地はないけれど戦闘が起こりそうな地域の近海に、あらかじめ武器弾薬などを満載した輸送船を配置したもの。これなら、何かあったら兵士は身1つで航空機によって現地に急行し、そこで合流した配備船からの補給で装備を調えられます。
 ちなみに、船に積み込まれているのは、本来は基地で備蓄すべきものならすべて。武器弾薬や燃料からパン焼きオーブン、印刷機、保冷車まで載せていたそうな。
 これは輸送船の使い方の一例ですね。

野戦炊飯車

 そもそも戦場なんて場所は非人間的な世界であって、ただでさえ気分が落ち込みがちなのに、これでメシが不味かったら最悪!! ということで、兵の士気が落ちないよう、軍隊はいつでも食事に気を使います。湾岸戦争時のアメリカ軍のスローガンが「すべてのタコ壺にフルーツバスケットを」だものね。
 そこで前線でも温かい食事がとれるように考え出されたのが、移動式の野外炊事施設。アイドレスでいうところの「栄光1号」。シチュー鍋やコーヒー沸かし機が付いていたりする、移動式キッチンというより給食センターですね。

【きみこ】「本気でフルバ? 贅沢なの」
【まなせ】「それはどうだろう。とにかく最前線でも生鮮食品を欠かさずにということらしいよ」
【きみこ】「ああ、そんなもんなの」
【まなせ】「でも実際、湾岸戦争の際には『ウルフモービル』と呼ばれる移動式ハンバーガーショップがアメリカ軍の前線まで出張営業していたんだって」
【きみこ】「ホント?」
【まなせ】「フライドポテトやコーラもあったらしいよ。まあ、前線といっても、それより前の方にサウジアラビア軍やシリア軍はいたらしいんだけどね」

整備兵

 整備の仕事が重要なのは、ゲームのガンパレードをプレイしている人には説明の必要はないはず。どんなスゴイ兵器にエースが乗り込んだとしても、整備不良で動かなかったり照準が狂っていたりしたら張り子の虎です。それは航空機でも艦船でも同じです。
 実際に、ドイツのタイガー戦車などもこまめに整備しないと、まともに動かなかったという話も聞きます。

工兵

 戦場において、土木や建設作業などで戦闘を支援する兵のことを「工兵」と呼びます。
 戦争映画で、ほとんどの歩兵は物陰で隠れているのに、爆薬筒を抱えて敵トーチカ近くまで突っ込んでいったり、点火用のケーブルを引いていて機関銃で撃たれているのが工兵です。沖縄で日本人が隠れている洞窟に火炎放射器を浴びせるのも工兵。ドイツ軍戦車にバズーカ砲をぶっ放すのも工兵。ブルドーザを乗り回して飛行場を造成しているのも工兵。なんだか、いろいろですが、特殊な機器や建設車輌を扱うのは工兵なのですね。
 細かく分けると、戦場のど真ん中で鉄条網を爆弾で吹き飛ばしたり、味方の陣地を構築したり、火炎放射器やバズーカ砲を扱うのが戦闘工兵。比較的安全な後方地域で橋を架けたり道路を整備したりするのが建設工兵。ちゃんとアイドレスでも上級職業で区分されています。
 ちなみにバズーカ砲とは携帯用の対戦車ロケット発射器のことです。当時の人気コメディアンが使っていたラッパ「バズーカ」に似ていたことから、その呼び名がつきました。

【きみこ】「火炎放射器とかバズーカ砲を使うのって特殊技術なの?」
【まなせ】「行進のやり方覚えたり、ライフル撃つよりはね。そもそも、集めた人間に字の読み方を教えなくちゃいけない場合も少なくなかったらしいよ。1940年代の話だしね」
【きみこ】「……それ、なんてジオン体育大学?」


目と耳をしっかりと〜情報収集と諜報活動

対空ミサイル施設

 「三国一の弓取り」という言葉があるように、サムライの時代であってもまず第一の武器は弓、長距離兵器でした。それから槍。最後に混戦状態になったり、弓矢が使えない室内の戦いになって始めて刀や剣が意味を持ってきます。
 ミサイルとは現代の弓矢。コストはかかりますが、自分が至近距離で敵と対峙することを考えたら安いものです。しかし、ミサイル迎撃は命中精度が低いものですから、そこは数で補わないといけませんし、それだけに頼り切ることもできません。

レーダー&指揮所

 さて、戦闘においては近づいてくる敵をいち早く発見し、迎撃が間に合うタイミングで攻撃を指示しなくてはいけません。レーダー&指揮所はそのため防空システムです。このレーダーの性能や、察知してから指令を出すまでの要撃管制システムは重要であり、第二次大戦中にはレーダー技術を巡る諜報活動や偵察のための強襲作戦などが繰り広げられています。
 しかし、万が一にも防空システムが破壊されても、高射砲部隊や対空ミサイル部隊が失われていなければ、それぞれの部隊での反撃は可能です。効果的な活動は難しいでしょうが、何もしないよりはマシです。

暗号

 常識的な話をさせてもらうなら、敵の暗号を解読すれば、敵の行動を察知して対応できわけです。逆も同じ。だから敵も味方も自分のところの暗号をまもろうとするわけです。そこでスパイや特殊部隊が暗躍したり、数学者が狩り出されて暗号解読に従事させられることになります。そのお陰でコンピュ−タが発達したので結果オーライですが、「解読できても意味がわからなければ良いんだろ!?」とアメリカ軍はナバホ族のネイティブ・アメリカンを通信兵に採用したという話もあります。そりゃあ、目の前で話されていても解らないわ。
 けれど、せっかく敵の暗号を解読したりできたとしても、解読していることが敵に知られると暗号を変えられるので、時には味方の被害を見て見ぬふりをするのはあたりまえの世界でもあります。きびしいね。

諜報員

 ひとことで言ってしまえば「スパイ」ですが、日本の忍者が忍術を使って怪物に変身したりしないのと同じで、スパイも007のような華やかなものではありません。敵の情報を密かに入手すること(諜報)と、味方の情報が漏れないようにすること(防諜)が主任務です。

特殊工作員

 どちらかというと情報を扱うのが専門のイメージがある「諜報員」という言葉に対し、「特殊工作員」というと現場で具体的な作戦を実行するイメージがあります。決してフィギュア造形師のことなどではありません。
 職業アイドレスの要点が「タイツ」「拳銃」「長い髪」、周辺環境が「館の中」ですから、これはもう映画やアニメの女スパイそのままです(女とはどこにも書いてないのがミソですが)。とはいうものの、今の日本で「特殊工作員」というと、「拉致誘拐」「なりすまし」で飛行機に爆弾を仕掛けると、あまり良いイメージではありません。

特殊部隊員

 特殊部隊はスパイではありません。当たり前だけれど念のため。
 通常の軍の部隊や警察などでは対処できない作戦に投入するために、選抜されて訓練を受け、特別な装備を与えられた部隊であり、小人数で後方攪乱や破壊工作、人質救出などの任務を遂行します。切り札部隊と考えれば良いですが、普通は巨大ロボットは付いてきません。アメリカのデルタフォースやグリーンベレー、旧ソ連のスペツナズや日本のレンジャー部隊、コミックなら『アップルシード』のESWATといったようなものです。

【きみこ】「アイドレスでいうと、たとえばタマ大統領の私邸に突入したりするのが本来の役どころかな」
【まなせ】「そうだね。正面からの力押しが難しいときに、こっそり裏口から忍び込んでケツをぶっ飛ばすような仕事に重宝します。あとは偵察チームに投入するとかかな。使い道はいくらでもあるけれど、切り札はそう簡単には使えないよね。」


余談

参謀旅行

 いろいろ作戦とか兵の配置を学ぼうというなら、机上論では足りません。実戦をあれこれ経験するのがいちばんですが、そんなことは無理なので、せめて図上演習(シミュレーション・ゲーム)という話になります。
 それでも、やはり百聞は一見にしかずと、脳裏に描いていただけの作戦を現地を見ながら検証しようというのが参謀旅行(自衛隊では幕僚旅行または現地戦術)。明治期にドイツから教官として招聘されたメッケル少佐が導入したのが日本での最初なんだそうです。
 19世紀末のドイツ陸軍参謀総長シュリーフェンは、しばしば部下の参謀将校たちと旅行に出かけては、景色を観ずに地形ばかり見て作戦を練りあっていたと言います。周囲にもそういう主旨の旅行に行く軍事好きな人はいますが、聞いてみると山も森も繁華街も「あの山の上のホテルが邪魔で陣地が作れん!」「水源地はどこになる?」「あの国道が潰されたら、迂回ルートはどうなる?」といった視点でしか見えなくなるそうです。それでもって、「ここは部隊を駐屯させるのに最適だ」という場所には必ずお寺や神社が建っているんだとか。

【きみこ】「参謀旅行って、アイドレスの参謀が小笠原へ慰安旅行へ行くわけじゃないですね」
【まなせ】「思いっきり違いますが、結果的に似たような状況になるような気がします」

軍隊の編制

 軍隊の編制についても、各国各時代においてさまざまな差異がありますし、同じ国の同じ時代でも陸軍と海軍では異なります。
 そこで、またまた極めて大雑把に編成の一例を紹介してみます……などとくどいくらい念押しするのは、それくらい差が大きいからですが、さしたる支障はないと信じます……。

■陸軍
 【師団】 3個旅団および師団司令部直属部隊から構成される。おおよそ定数15000人。師団長は准将から中将。
 【旅団】 2個連隊から構成される。4600人くらい。大佐・准将・少将が指揮。
 【連隊】 3個大隊から構成される。2400人くらい。連隊長は中佐もしくは大佐。
 【大隊】 4個中隊から構成される。800人くらい。大隊長は少佐もしくは中佐。
 【中隊】 4個小隊から構成される。200人。中隊長は中尉もしくは大尉。
 【小隊】 50人。小隊長は少尉もしくは中尉。

【まなせ】「これ以外にも、小隊の下に「分隊」や「班」が、師団の上に「軍団」「軍」「軍集団」とかあったりなかったりしますが、まあ、だいたいこんな感じです」
【きみこ】「気にしなくて良いということですね!?」
【まなせ】「うん」

■海軍
 【大将】 艦隊司令。
 【中将】 艦隊司令。
 【少将】 小艦隊指揮官。
 【准将】 −
 【大佐】 戦艦・艦長。巡洋艦・艦長。航空母艦・艦長。
 【中佐】 駆逐艦・艦長。潜水艦・艦長。巡洋艦・艦長。航空母艦・副長。戦艦・副長。
 【少佐】 駆逐艦・艦長。潜水艦・艦長。巡洋艦・航海長、砲術長、水雷長。戦艦・通信長。基地司令。
 【大尉】 駆逐艦・砲術長、水雷長。
 【中尉】 機関長。航空隊中隊長。
 【少尉】 −

【きみこ】「なんか陸軍の並び方と違うよね?」
【まなせ】「海軍は陸軍以上に国ごとの階級と職能が異なっているから、こっちの方が解りやすいかと思って」
【きみこ】「これは、たとえば少佐なら駆逐艦の艦長くらいの地位だよという意味?」
【まなせ】「そう。海軍は艦が単位だからね。陸軍の大隊なら4つに分けようが、150人を余所の隊にやろうが自由だけれど、駆逐艦を2つに分けたりとかはできないからね」
【きみこ】「どちらにせよ、アイドレスで階級は関係ないので、あくまで参考ですよね」
【まなせ】「ですね。古式ゆかしく呼ぶのなら、海軍元帥、戦隊司令官、勅任艦長、海尉艦長、海尉くらいで、あとは先任順で序列をつけるくらいでしょうか」

【まなせ】「……さあ、説明するのはこんなところかな」
【きみこ】「あのお、軍事用語って『戦艦』と『巡洋艦』の違いとかは含まれないの?」
【まなせ】「必要?」
【きみこ】「解らないわよ! どっちも大砲載せた大きな軍艦にしか見えないもの」
【まなせ】「それくらいは昭和の男の子の常識なんだけどなあ……まあ、いいや。別ページにまとめてみようか。とりあえず、アイドレス関係を中心によく解らない言葉をリストアップして見せてね」
【きみこ】「OK☆」

『付け焼き刃の軍事用語』編へ続く

1700326:曲直瀬 りま:FVB
1700339:きみこ:FVB