祖父の御伽噺は、要約するとこうだった
 祖父は、瞑想の為に度々この砂漠を訪れていたそうだ。
 そんなある日、突然の砂嵐に巻き込まれて道に迷ってしまったが、何とかこの遺跡を見つけて命拾いしたとかなんとか。その時に、彼女と出会ったらしい。

 ちなみにこの御伽噺のオチは、この少女に会いに行く為に『瞑想』に行く回数が増えた祖父を、祖母が浮気しているのではと勘違いしてエライ大喧嘩をした、という酷い物だった。

 子供心にそんな話を聞かせるのはどうかと思ったが・・・まぁ現状を見るとそう祖父の事を批判出来そうにないのが悔しい所だ。

「見た所熱中症じゃないみたいだけど・・・大丈夫?」
「何年ここに通ってると思ってるんだ?本当に大丈夫だよ。・・・まぁ今日は少し日差しが強いからな、ほら、さっさと日陰に」
 言い終わる前に、彼女はいつもの日陰に移動していた。何が嬉しいのかにこにこしながら、はやくはやく、とこっちに手招きをしている。

 月に一度という頻度とはいえ、それなりに長く会っているのに彼女の名前はまだ分かっていなかった。何度か尋ねた事はあったが、『覚えてない』、の一点張り、何でここにいるのかというのも『気がついたらここに居た』らしい。
 一度きつく問い詰めた事があったが、その時は泣きながら走り去ってしまい、その日はもう二度と姿を現さなかった。なのでもうあまり彼女の事は聞かないようにしている。

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