動物達は一様に私を物珍しげに見ていたが、こちらに害が無さそうだと思ったのか、近づいて来た。
 私はその光景に飲まれて、固まっていたが、動物達が近寄ってくるのを見て、手を差し出し、手近な馬を撫でてみた。
 馬は全く恐れなど抱いていないかのようで気持ちよさそうに撫でられていた。
 金色の猿や赤い鳥達が自分も自分もとばかりに近寄って見上げてきたので撫でてやる、嬉しそう。
 そしてしばらくそうやって動物達と触れ合っているとはたと気が付いた。この風景を何かに残さないといけない、 それが私の目的だった。
 何か映像か写真に残せるものは無いかと探したが生憎何もなかった。
 全部飛ばされた荷物の中に入っていたのをすっかり忘れていたのだ。私は酷く落胆した。
 蜃気楼のオアシスに騙された時よりもこの時の方が落ち込んだ。
 その様子を見て、動物達が私に身体を摺り寄せてきた。彼らは慰めてくれているのだろう。
 私はその様子にふっと笑って、また彼らを撫でてやった。

 その後は一晩を彼らと共に過ごした。途中気が緩んだせいか、忘れていた空腹が戻ってきて、腹から気の抜けた 音がした時は果物を彼らが取ってきてくれた。
 どれも全く見た事の無い物ばかりだったが、大層美味かったのは覚えている。
 食事のお礼に歌を歌ってやった時も大層驚かされた。昔研究していた古い古い時代の言葉の歌を歌うと動物達も鳴き声を上げて唱和し始めたからだ。それは全くまとまりの無い集団であったが、不思議と調和が取れて素晴らしい合唱であった。
 そして、寝る時は動物達と一緒に眠った。馬や猿達と一緒は獣臭かったが、それが逆に心地よかった。

 翌日、私が目を覚ますと私は砂漠の中に一人立っていた。

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