しかし、無害と言うのは間違いである。巻き込まれない限りは確かに無害であるが、遠めにも見えるような規模の大きな砂嵐は、眺めてからでは逃げることは、まず適わない。
 運良く風上にでも位置取りしていない限りは、実際に巻き込まれずともその煽りを受けた砂によって視界を奪われ、最悪進むべき道も帰るべき道も見失うことになるだろう。砂とともに天高く巻き上げられ、生者として二度と地上に帰る事がないことも多い。

 しかし、巨大な砂嵐に巻き込まれながら奇跡的に生還した者もごく希に存在する。
 彼らは口をそろえてその向こうに「巨大な都市を見た」と言うのだが、果ての砂漠にはそのような都市の存在は確認されていないため一種の記憶混濁だと思われる。

 だが、あまりにも同じ事例が数件続くためにひとつの言い伝えとして語り継がれており、これも砂嵐を旅人が求めてやまないことの起因になっていると考えられる。

TOPページへ