「・・・もう、遅いぞ〜!」
水を飲み一息ついていると、可愛らしい声が聞こえてくる。
声のした方向を振り返る。
乱雑して生えた石柱の一つに座り、白い髪を風になびかせながら頬を膨らました少女がこちらを見ていた。
唯一つの例外を除いて、だが。
彼女と初めて会ったのは、かれこれ5年ほど前だったろうか。当時学生だった私は、考古学をかじっていたせいもあって、色々な遺跡を見て回っていた。
次の行き先を考えていたある日、ふと子供の頃に祖父に聞いた御伽噺を思い出してこの遺跡を目指すことにしたのだ。
「どうしたの? ボーっとして」
「・・・いや、なんでもないよ」
いつの間にか近づいてきた少女が心配そうに見上げてきていた
年は15,6歳くらいだろうか。
雪のように白い髪とこの日差しでもまったく日焼けしていない白い肌。
日の照りつける砂漠だというのに、場違いな白いワンピースを着ているが、本人はまったく気にしていないようで汗一つかいていない。
白で固められた風貌の中で、紅い瞳が一際印象を強くしていた。
初めて会ったのが5年前なので、当時は10歳くらいかと言うと、そうではない。彼女は、初めて会った時からまったく姿が変わっていなかった。
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