びっくりして辺りを見回すがオアシスや見た事も無い動物などは全くいなかった。代りに近くに集落が見えている。
あれは夢だったのかと私が思いかけた時、たくさんの動物達の鳴き声が聞こえてきた。
振り返るとそこには木々の間から動物達がこちらを見ていた。
私が驚いてそちらに向かおうとすると彼らの姿は不意に歪んだ後、忽然と消えた。
そしてそこにはただ乾いた風が吹きぬける砂漠が続くだけであった。
あれから数年、何度か果ての砂漠を訪れる事があったがあれ以来一度としてあのオアシスに遭遇する事は無かった。
あの日起こった出来事を何人かの友人にも話したが、当然ではあるが信じて貰える事は無かった。
だが、私は知っている。あの日の出来事は夢ではないのだと。
『彷徨いのオアシス』は本当にあるのだと言うことを。
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