その現象は起こる場所も条件も解明されていないが、ごくたまに砂漠の景色の向こうに見たこともない街並みを見たという人が出てくるのである。
 その目撃者達の証言によると、突如砂漠の景色の向こうに、背の高い建物とそれを中心に広がる街並みが現れるらしい。その街並みは、揺らめく大気に遮られて詳細な形を確認する事は出来ないが、近代的な街並みのようにも古代の遺跡のようにも見えるのだという。そしてしばらくすると、街並みは幻のように掻き消えるのだそうだ。

 勿論この果ての砂漠にはそのような街は存在せず、位置的にも他の宰相府の区画の建物ではないようだ。
 砂漠に沈んだ都市の亡霊だとか宰相府で秘密裏に建設されている軍事基地だという何の根拠もない様々な憶測が飛び交うが、真相を知るものは誰一人としていない。

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