学術区



 この区画に足を踏み入れた瞬間、かび臭いような黄色い匂いがしました。
 この辺りは学術区と呼ばれているようです。高等学術院、大病院、図書館、博物館等が並んでいるようですね。 勉強している人が多いせいでしょうか。書店や文具用品店も立ち並んでいて、勉強に関するものは一通り手に入りやすくなっているようです。

 歩いていて気が付きました。かび臭い、黄色い匂いと言うのは、古書店のインクと黄ばんだ紙の匂いのようです。古書店もたくさん並んでおり、学者のような人達が大きな荷物を持って歩き回っています。きっと資料の買出しに来ていたんでしょうね。
 私もこの辺りをあちこち歩いてみる事にしました。
 古書店で何かいいものがあるのかもしれないと思い、覗いて見る事にしました。

 古書店の中は、いつの時代になるのか分からない古い歴史書から、つい最近流行った小説まで、幅広いジャンルの本が並んでいました。
「好きな本、あるかい?」
 いかにも古書店の店員さんと言う風体のおじいさんが声をかけてきました。
「今読んでいる所です」
 私は苦笑しながら答えました。
「お客さんにはこの本なんかいいんじゃないかい?」
 おじいさんはぶ厚い本を持ってきました。
「?」
 私は受け取ってページをめくりました。
『ma』
 それだけがちょうど本を真ん中までめくった所に書いてありました。
「お客さんにぴったりだったろう?」
 おじいさんがウィンクをしました。
 よくは分かりませんが、この本が必要と言う事だけは分かりました。
 私はこの本を買い、次の区域を目指す事となりました。