ここでは小説やレポートなど文章を書く際に意識した方が良いことがらをまとめてあります。
これは絶対の法則ではありませんし、ここに書いてあることを無視しても面白く読ませる文章を書く人は幾らでもいます。
とりあえず、慣れるまでの目安と考えてください。
まず何を書きたいか、決めて下さい。
それは漠然と「同じ藩国の仲間が活躍するところを書きたい」あるいは「友情の尊さをうったえる」というものでも、具体的に「××の戦いで自分のキャラクターが、先頭きって敵陣を突破したシーンを書きたい」でもかまいません。
もしテーマが前者のように具体的な内容が決まっていないものならば、「最初から順番に話を考えていく」という方法がやりやすいでしょうし、後者なら「いちばん書きたいシーンに話をどうつなげていくか考える」ことになるでしょう。
小説の書き方は人さまざまですが、「最初にだいたいの構成を決めてから、最初から順番に書いていく」というのが基本のようです。
「論文を書くときは目次を書き終わったら半分完成したようなものだ」といわれるくらい、構成は大事です。短編くらいなら書きたいシーンから膨らませる方が楽かもしれませんが、中編以上の文章を書く場合は構成を決めてからの方が全体のバランスが崩れにくく、また結末に向かって話を進めるのが容易ではないでしょうか。
構成というと難しく思えますが、要するに「目次を書く」つもりでいればいいのです。たとえば昔話の『桃太郎』なら、
1.巨桃〜少年が桃から生まれること。
2.立志〜村を襲う鬼を退治することを決意する。
3.きびだんご〜旅の途中で犬・猿・雉がお供になる。
4.鬼ヶ島強襲〜桃太郎一行と鬼が戦闘に突入する。
5.凱旋〜桃太郎、財宝を手に入れ凱旋する。
こんな感じです。
構成/目次を決めるときは、起承転結や序破急を意識すると良いでしょう。
これは物語の構成の基本です。基本ということは応用がいくらでもあるということですが、まず基本を押さえてからのことです。私たちが普通書くような文章はあまり長くないので、起承転結より序破急を意識した方が良いかもしれません。
「序破急」を簡単に説明すれば、「序:導入部。登場人物や場面設定の紹介パート」「破:山場。物語が大きく動き出すドラマの核」「急:オチ。物語は急速に収束して決着する」ということになります。
書くときは一気呵成に。とにかく書いた文章を読み返さずに最後まで書いてしまうと楽です。いちいち読み返して直してみたり、日にちをおいてポツポツ書き進めているとなかなか完成しません。書きたいときが書き上げられるときです。
直すのは、文章をいったん書き上げてからでもできますし、パソコンやワープロのおかげでだいたんな構成変更はいくらでもできます。
他のプレイヤーを自分の文章に登場させる場合は、親しい親しくないとは関係なく、事前にひとこと了解を得ておきましょう。場合によっては、よかれと思って書いた文章であっても当人の気に入らずトラブルが起きることもあります。
「好きに書いてくれればいいよ」という人ばかりではないのです。
自分では気がつかない誤字脱字や説明不足の箇所などがたいていあります。できれば誰か第三者に目を通してもらうと良いでしょう。
改行しないまま何十行も続く文章は、通称『墓石』とか『モノリス』などと呼ばれ、読む者にプレッシャーを与えてしまいます。
読みにくいからやめましょう。
文章の改行がひんぱんに繰り返されるのも、あまりよくありません。文章のテンポを良くするために意識してやることはありますが、ほどほどにしましょう。
長くてもいけない、短くてもいけないと言われると混乱するかも知れませんが、あれもこれもぶちこんで段落1つというのはまとまりがありません。適当なところで改行をいれましょう。
日本語は主語が無くても通用する便利な言葉ですが、主語がまったくないまま文章が続いたり、どれが主語だか解らなくなる長文は論外です。常に読み返して確認するようにし、少しでも解りにくいと感じたら文章を一旦切りましょう。
例)「〜というわけで、」「〜となれば、」
ワープロ等を利用していると、ついつい難しい漢字を使いがちですが、文章が固い感じになるので適当な量でおさめましょう。ライトノベル作家だと「第2水準(場合によっては教育漢字)以上は使ってはいけない」と言われることもあるそうです。そこまですることはありませんが、読みやすさを考慮することは必要です。
たとえば「ください」と「下さい」が併用されているとか、「眼鏡」と「メガネ」の両方を使っていると、(会話文で話し手の癖として使い分ける場合は別として)文章にまとまりがなくなるので避けましょう。
途中で改行しなくてはいけなくなるほど1人のキャラに長々と演説させるのは、あまり好ましくありません。避けられないのであれば、適当なところで一旦文章を切り、情景描写などを挿入するようにしましょう。
1つの文は、息継ぎしないで読みきれる長さが適当です。長いかなと思ったら、自分で声に出して読んでみましょう。
例)「空は青い。」「1機の白天が優雅に飛んでいた。」
↓
「空は青く、1機の白天が優雅に飛んでいた。」
例)「だが、それは甘かった」
使う人もいますが、基本的に不要です。
例)「使う人もいます。しかし、基本的に不要です」
主語が文中に来るときは、その直前に読点をつけます。
例)「信じられず、私は泣いた」
例)「ありえないことだ、それは」
例)「眼鏡をかけた、男の妻」(眼鏡をかけているのは女)
「眼鏡をかけた男の、妻」(眼鏡をかけているのは男)
そもそも、最初からこういう判りにくい文章にしなければ良いんですが。
例)為替で振り込む。
為替振込
「一攫千金」「千人切り」のように熟語になっているもの、固有名詞、千万億などの単位などは除きますが、そうでなければ横書きのときの数字は12345……の算用数字を使い、一二三四五の漢数字は避けます。
通常、段落が変われば次の文の頭は1文字空けますが、会話文の場合はそのまま1マス目に「が来ます。空ける書き方も間違いではありませんが、1行の字数を考え、打ちだしたときのイメージがスカスカにならないよう気をつけましょう。
「だ・である」調と「です・ます」調が混在しないようにしましょう。
「だ・である」調だと文章がテンポよくなりますが、反面、報告書的で固かったり偉そうに読めることがあります。一方、「です・ます」調だと柔らかな印象になりますが、文章が冗長になりがちです。
「佐藤は間違えたのだった。佐藤には許されない事だった」の様に「だった」という同じ文末が続いたり、「佐藤」「佐藤」と同じ人物を指し示す同じ単語が連続することは、文章が単調になって好ましくありません。
テクニックとして意識して使用するなら別ですが、できるだけ「だった」「なのだ」とか「佐藤は」「彼には」のように変化をつけましょう。
カギかっこで囲まれた文の末尾の場合は、空ける必要はありません。
少しでも解らない言葉、あやふやな知識があったら、まず検索エンジンで調べましょう。今はパソコンの前に居ながらにして、大図書館並の検索が可能です。ちょっと調べれば解ることなのに「よく知らないけれど」「なんだか解らないけれど」などと書くのは、文章書きとして恥ずかしいです。
もちろん誰でも簡単に書き込みができるインターネットの世界では、事典的なページでさえ100%信頼することはできません。できる限り複数のサイト、可能な限りオリジナルの出典に近づくように探してみましょう。無料の機械翻訳でも大意がつかめないことはないので、英語サイトくらいまでは調べても良いと思います。
たとえば目玉焼きとアスパラを乗せたピザをなぜ「ビスマルク風」と呼ぶのかについて、とことん調べてみるといろいろ興味深い話が出てきて、これで半日くらいは簡単に潰せます。
いまや手放せなくなったのがシソーラス(類語辞典)。文章を書いていて言葉に詰まったり、ちょっと言い回しを変えてみようかという時に重宝します。
わたしはデジタル類語辞典を愛用しています。たとえば「戦場」で引くと、同義語として「キリング・フィールド」「戦陣」「戦地」「戦野」、狭義語で「決戦場」「前線」「第一線」、関連語で「催事場」「死に場所」「修羅場」等といった単語を表示してくれます。
言葉の選択が単調になるのを避けられますし、発想も広がるかもしれません。無くても支障はないけれど、有ると便利というアイテムです。
「百聞は一見にしかず」とは良く言ったもので、いろいろ机の上で調べたり想像したりしてみても、現実に経験したものにはかないません。見てしまうと、現実に縛られて想像力が縛りつけられるという意見がないではありませんが、経験してみないと解らないことが多いのも事実です。旅行でもスポーツでも演芸でも、機会を逃さないようにしましょう。
巨大な空港、小さな空港、狭くて暗い鍾乳洞、ライトアップされた広大な鍾乳洞、南海のリゾート、都心の安宿、欧米の住宅街、東南アジアの下町、戦闘ヘリの機関砲の手触り、滑走路の照り返し、官庁の応接室、町工場の事務室……。すべてがネタの宝庫です。それらを足がかりにして、発想を飛躍させましょう。
本を読むときは、スゴイと思ったときがどんな状況で出てきたのか、同じように登場人物が多いのに判りやすい話と判りにくい話があるのはなぜか、どの部分を自分は面白いと思ったのか、そんなことを意識して読むようにすると良いかも知れません。
資料になりそうな本や雑誌はできるだけ手元に置いて、すぐ検索できるようにしましょう。本の山に埋もれたくない人は、電子データ化を常に心がけておくのも方法かも知れません。
とにかく、文章を書いていて何か迷ったときは、とりあえず「声に出して読んでみる」です。これだけで、かなり違うと思いますよ。
1700326:曲直瀬 りま:FVB