ファッションショー

ショーの様子
 ハイマイル地区でも特に名が知られてるイベントがあります。それこそは2月の冬至と8月の夏至、年に2回行われるファッションショー。人呼んで「宰相府コレクション」。
 青い薔薇と完全なる黒。それが欲しければココへ来いといわれるハイマイル区画で最も名誉ある称号、宰相府御用達の資格を決めるための美の戦いとも言えます。
 しかし、本戦となるハイマイル区画での発表会までには、数多くの難関があります。

 一部のシードともいえるデザイナー以外は、まず公募に応募して予選会を突破する必要があります。
 開催予定日三カ月前にその会のテーマが公示され、本戦一カ月前の選考会までに作品を提出する事になるのです(2月の大会では春・夏。8月の大会では秋・冬のコレクションであるため、基本的に季節に沿ったテーマになるとか)。
 分野はカジュアル フォーマルの2点に絞られ、限られた時間の中で自分達の作品を作り上げんとデザイナーや工房は張り切ります。
 まだ名もない無名のデザイナー達やこの機会を逃すものかとする新人モデル達の挑戦もあり、一気に活気づく時期でもあります。またこのコレクションのために、有名店のデザイナーや職人達がチームを組んで一つの名義で新作を発表するなど、業界内での横のつながりの発展や新しい才能の出現によって業界が再編されるほどの大きな影響力を及ぼすとされています。
 徹夜作業によって担ぎ込まれる新人デザイナーが続出して病院もフル稼働するのだとか。

 集まった万を軽く超えるデザインの中から、まずは選定員が半分まで絞り込みます。
 この時点で、一時的な買い占めなどの発生も考慮して市場介入などもあると言われています。
 この登竜門に毎年全土のデザイナー達が店や個人の名誉を賭けて挑むのです。その様はまさに圧巻ともいえるでしょう。
 まったく関係なく何となくノリでぼんぼこ応募する人たちもかなりいますが、そういう方々は随時弾かれます。たまに、あまりに斬新すぎる子供のデザインがあれよあれよと通って阿鼻叫喚になることもあったようです。

 一方モデル達も、自分を使ってもらうためにさまざまな売り込みをかけます。
 まだ名前も広まっていない新人のモデル達は、自ら売り込みをかけてデザイナーたちの新規ユニットなどと組み、このコレクションに参加しようとします。既に有名店は専属モデルで固められていることが多いためです。

 さて、選定会を通過した後も第2次、第3次と更なる審査が行われ、本戦に出場できる20組にまで絞り込まれます。
 最終選考を突破した方の元には、宰相府の刻印を模した蜜蝋の封が施された手紙でその旨が通知され、開催一週間前にハイマイル区画に集められます。
 この間さまざまな危険性を考慮して、デザイナーだけでなくその関係者などにも宰相府が警護を派遣するという噂もあるほどです。
 各デザイナー達は会場の一室に集まると、宰相から直々の激励の言葉を受けてそれぞれに用意された作業場に入ります。要求すれば危険なもの以外は全て用意されますが、緊急時を除いてスタッフ以外の外部との接触を禁止される事になります。
 この作業場には関係者とアシスタント、それと厳しいチェックをくぐり抜けたものだけが入ることを許されます。そして原則として大会終了までは外に出ることが出来ません。
 モデルたちについても同様で、仮縫いやリハーサルの時以外は、用意された宿舎で思い思いの時間を過ごす事になります。

ノイエ・バビロン

 バビロン区で最も大きな建物である『ノイエ・バビロン』の大ホールで行われるショーは、最終発表の場だけあって、各国から集まった要人や天領中の報道関係者の取材席だけでも1000を超えると言われます。
 わずかに売り出される一般席は一席10マイルとかなりお求め安くなってはいるのですが、前売り販売開始わずか5分で完売。ダフ屋どころか偽造チケットまで出回るため、毎回宰相府はこの対策に頭を悩ませているとか。
 ゲートライン区付近ではチケットが手に入らなかったファンが列を成すため、一時的な暴動にも発展しかねないほどの熱狂ぶりでこのショーにかける意気込みが伝わってきます。

 年2回の本戦はまさに美の競演。デザイナーと職人、そしてモデル達が織り成す努力と才能の結晶。
 もし興味を持たれましたらこれまでのコレクションの歴史を纏めた資料館もありますので、ぜひお立ち寄りください。今年のコレクションも今から盛り上がること請け合いです。



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